ヤリマン。
現代を生きる人は、この言葉を聞いたことがあるだろう。
頻繁に性交渉をする個体というのが、この言葉の指す意味である。
しかし、なぜこれほど「やりまん」という言葉が広がっているのかを進化心理学から読み解きたい。
参考にするのは、北海道大学の元教授・アメリカの社会学者がかいている「進化心理学から考えるホモサピエンス」を参考にしたい。
目次
1. 離婚家庭の女性は「初潮」が早い
まず、進化心理学から考えるホモサピエンスに、「離婚家庭の女児」について書かれている。
ある研究によると、親が離婚した女児は、「初潮」を早くむかえやすいという傾向がある。
初潮を早くむかえるということは、性的に活発になり多くのパートナーを持てる。
家庭には、父という男性がいない可能性が多く(離婚においては、大半、母が子を引き取る)、初潮を早く迎えることによってパートナーを得ようとする。
また、父親の行動によって、「男は女に長期的に投資しない」というイメージが芽生える。
そのため、一人の男性に長期的な投資をするというより、男を信用しない、多数の男と短期的な関係をもつことで「乱婚的」な戦略をとる。
2. 男はなぜ「やりまん」を避けるのか
まず、なぜやりまんと言う言葉がはびこっているかと言うと、「やりまん」を好きになった祖先のオスは遺伝子を残す可能性が低かったという仮説がある。
やりまんは「乱婚的」な戦略をとるため、多くの男と性交渉をする確率が高い。
そのため、やりまんと関係を持ったオスは一時的に性交渉をしても、その後その女性が別の男と乱婚すれば、生まれる子どもは自分の子であるかどうかなんてわからない。
1万年前はDNA検査なんてなかったのだから、比較的誠実なメスを選んだオスのほうが、やりまんを選んだオスよりも後世に遺伝子を残す確率が高いため、人間のオスは「やりまんを避ける」という傾向があるのかもしれない。
3. 5歳以前の「父親の不在」 単身赴任の恐ろしさ
また、離婚とは、その女児の5歳以前に「父親が不在であった」ということだ。
それと似たように、子どもが幼少のころの「父の単身赴任」も、離婚家庭と似たような影響を女児に与える。
幼少の父と離れた経験から、子どもの父へのイメージが形作られる。それは、「男は女に長期投資するものではなく、信用できない」というイメージだ。
そのため、幼少のころ、父の不在を一時的に体験した女性も、無意識のうちに「乱婚的」な戦略をとってしまう可能性がある。
それは、1人の男を愛し続けるというより、物理的・精神的にも「多くの男と関係を持ちたい」という衝動が訪れる。
しかし、やりまんにも2種類いて、「行動化する(実際に男と短期的な関係を結びまくる)不誠実なやりまん」と「行動化しない(乱婚的な衝動を抑えられる)誠実なやりまん」が存在する。
4. 行動化する不誠実な顕在型やりまんと、行動化しない誠実な潜在型やりまん 自己コントロール
しかし、やりまんにも2つの種類がいて、行動化するやりまんと行動化しないやりまんがいる。
前者のタイプは浮気や不倫なんてかんたんに繰り返す。一方、後者は「乱婚したい」という無意識の衝動がありながら、それを抑え込み、一人の異性を愛すという戦略をとることもできる。
また、行動化とは、実際に多くのオスと性交渉をすることだ。
そこで、行動化するやりまんと行動化しないやりまんの違いは、これは一つの仮説だが、「自己コントロール力の有無」があげられる。
自己コントロール力が優れていれば、例えやりまんであっても自分の性欲を抑えることができる。そのため、乱婚的な衝動を持ちながらもそれを抑え、一人の男性を愛す。
一方、自己コントロール力のないやりまんは、下半身の赴くままに、死ぬまで破天荒な生殖活動を続ける。
しかし、ここで「自己コントロール力」の有無を、男性はどのように判断すればよいのだろう。
それは、「過去の恋愛遍歴」や「性活動の遍歴」、「勤勉さがあるかどうか」で判断できる可能性がある。
一番分かりやすいのは、学業やスポーツでなにかしら成果を上げたことがある女性で、これは自己コントロール力がなければ成しとげられないため、誠実なやりまんである可能性が高い(最低なことを言うが、学歴の高いやりまんの方が行動化するやりまんである可能性が低いのではないだろうか)。
一方、自堕落な生活を送っていたり、自分を律するといえないような習慣をもっていたり(髪を毎日洗わないなどの自分の身体へのケア、偏見かもしれないが経験則からの仮説として)、過去にパートナーがいながらも他の男性と性交渉をしたり(行動化)、そうでなくても他の異性と会いに行って身体や精神的な接触があるならば、それは不誠実なやりまんである可能性が高い(一人の男性を愛すという戦略をもった女性が他の男性に会いに行くのはいいのだが、乱婚的な戦略をもっている女性がそれをするのは男性としては避けてほしいパートナーの行動、しかしコソコソ隠れて行こうとするのはもっと危険)。
まず、行動や言葉(言葉は嘘をつけるから半分信じて半分信じる、すべて信じることは恐怖)をみて、自己コントロール力に長けた女性かそうでないかを判断することで、男性は「寝取られ男」になる可能性を避けることができる。
逆に、自分の「パートナー以外の異性と触れ合いたい」という衝動に気づくことができれば、不誠実なヤリマンからの脱出に近づき、後の章でも述べる安定した人生を得る確率も上がる。
進化心理学から考えるホモサピエンスはこちら▼
5. 性的コンテンツの嗜好
また、やりまんを見分ける指標に、「性的なコンテンツを好むか」があげられる。
行動化するかしないかにしても、人間の脳は1万年前からほとんど変わっていないというのが、大学の教授たちが示している進化心理学の考えだ。
そのため、まずはなぜ「性的コンテンツ」が溢れているのかを考える。
まず、人間は画面で見る異性の裸を、実際に会っているものだと錯覚してしまうのだ。
1万年前は、スマホや性的コンテンツなどなく、私たちが現代で見る性的コンテンツも、私たちは「それが現実で起こっているものだ」と錯覚してしまう。
そのため、男性は性的コンテンツで女性の裸を見れば、勃起する。
勃起するのは性交渉を可能にするという役割があるため、脳が現実でその女性が自分を誘惑していると錯覚しているのだ。
しかし、女性の場合も同じであるということも考えなくてはならない。
女性がもし性的コンテンツを消費しているならば、それは性的に興奮して勃起した男が、現実の目の前で自分と性交渉する体勢にはいっており、それが始まっている光景をみて興奮しているならば、見ず知らずの男性に犯されていることを脳内で錯覚しているということだ。
前提として、女性は男性よりも、卵子の方が精子よりも作るコストが高いため、男性とは反対に多くの異性と繁殖する欲は少なくなる。たくさん性交渉するメリットは男性よりもはるかに少ない。
多くの男性は性交渉した分、遺伝子を多くばらまけるが、女性は多くの男性と性交渉しても妊娠するのは一回であり、生涯もてる子どもの数も少ない。
それなのに、見ず知らずの男の裸と、それに犯されている女のコンテンツを見て興奮しているならば、脳がそれを現実のものと錯覚している。
そのため、そのようなコンテンツを好む女性というのは、「乱婚的な衝動」がある可能性が高い。
6. 現代社会における「父という病」
まず、やりまんがいたとしても、その女性の責任ではない。
やりまんは、遺伝子に家庭環境が影響を与えたものであり、主に父親の行動が関わっている。
これは、岡田尊司さんの「父という病」でも触れられている(やりまんとは書いていないが父不在の子どもの影響について)。
親が離婚したり、仲が険悪である子どもは愛着が安定していないことが多く、それによって生じる悩みで人生を翻弄される。
しかし、1人のパートナーと関係した愛着を築くことで愛着の傷は埋まっていくのだが、身体に刻み込まれた「乱婚的な衝動」は、1人のパートナー以外にも目移りしてしまうことに繋がる。結果、1人のパートナーを愛し続けるのは、よっぽど自己コントロール力に優れたやりまんでないと、難しいような気もする。
遺伝子的には子孫を残せればいいが、個人の幸せいう観点で見た時に、一生幸せになれずに生を終えていくやりまんがいるのは残酷だ。
それも、父の行動が影響しているならば、父はなんとも罪深い生き物である。
父という病はこちら▼
7. 男のやりちんは遺伝子的なものと環境的なもの
最後に書くが、男の「やりちん」というのは説明が楽だ。
なぜなら、男はすべて、「やりちん」の遺伝子を持っているからだ。
現代の法律がない1万年前では、多くの異性との生殖が、精子をほぼ無限に作れるオスの最大の生殖戦略であった。
そのため、世の中に言われるやりちんとは不思議なもので、それを行動化できるかできないかの違いで、実は、すべての男はやりちんの衝動があり、それが行動に表れるか表れないか、多くの異性との性交渉ができるかできないかの違いなのだ。
もちろん世間でやりちんと言われている男性は多くのパートナーを持つし、それができない男性は「女性のアイドルやゲームキャラの順位をつける」という疑似的なハーレムを作り出せるサービスを消費する。
しかし、やりちんの衝動を持っていても、自己コントロール力に長けた人や、両親の仲がよくて「一人の女性に純愛を捧げる」という戦略をその父から学んでいる場合、それは行動化(パートナーがいるのに他の異性と性交渉しない)しないやりちんである可能性が高く、逆もいるということだ。
8. 幸せになるやりまん・やりちんからの脱却
このように、世間で言われているやりまん・やりちんについて解説した。
一つの仮説だから、これらは間違っている可能性がある。
しかし、これらの仮説を踏まえたうえで、かなりやりまんというのは不平等な人生を送らざるを得ないのが分かる。
主観的な幸福度もやりまんでない個体よりも低い可能性があるし、無意識の衝動に向かって、気持ちいいように生きているように周りからは見えるが、多くの男性からは多少避けられ、パートナーに巡り合えたとしてもそれは不誠実なやりちんである確率があったり、なんとも救われない。
しかし、先も述べたように、まずは「自分の無意識の衝動に気づくこと」が大切だ。
自分を苦しめているものも正体を見て、その衝動に従ったままでは、思い描く未来にならないかもしれない(衝動に従って幸せならいいのだが)可能性を自覚しているならば、自己コントロール力を高めたり、無意識の衝動によるパートナーにとっての不誠実な行動を抑えていく必要がある。
自己コントロールを高めるには、岡田さんの「真面目な人は長生きする」が参考になる。
30ページの「長寿性格テスト」の項で、最も長寿性格になる質問項目を、自分の生活に当てはめればいい。
例えば、「持ち物をちらかしっぱしにする」という質問があり、①とてもあてはまる~⑤まったくあてはまらないという答えを選ぶ。
その回答では、ネタばらしで申し訳ないが、⑤まったくあてはまらないが勤勉性が高く、自己コントールが高い回答だ。
この回答に当てはまらなくても、改善の余地はある。1つの質問の例だけど、ものを散らかしっぱなしにすることはやめ、整理整頓するように心がける。
このほかにいくつもの質問があり、自己コントロールに長けた回答が今できなくても、それと望ましい行動をこの質問紙から学び、行動を変えてみる。
心理学では、認知行動療法という心理療法があるが、この根底には「認知(考え)と行動が結びついている」という考えがある。
そのため、「自己コントロール力を高める」という認知へのアプローチは、日々の行動を変えていくことで、一事が万事、結果的に自己コンロール力を高めることに繋がる。
自己コントロールが上がれば、無意識の乱婚衝動も、オスの遺伝子をばらまきたい衝動もコントロールできるようになり、1人の異性を愛し続けるということが可能になってくる。
真面目な人は長生きするはこちら▼